その「考えすぎ」、脳が疲れているサインかも。
寝る前に過去の出来事を思い出して後悔したり、明日のことを考えすぎて眠れなくなったり。
そんな「思考の渋滞」にハマった経験、ありませんか?
それは、いわゆる“オーバーシンキング(Overthinking)=考えすぎ”の状態です。
脳がフル回転しすぎて、休むタイミングを見失っているサインとも言えます。
実は、オーバーシンキングは性格ではなく、「脳のクセ」。
つまり、訓練や習慣で変えられるものです。
この記事では、心理学や脳科学の知見をもとに、「考えすぎる自分」から抜け出す7つの方法を紹介します。
オーバーシンキングとは?【考えすぎの正体】
「オーバーシンキング」は直訳すると「過剰な思考」。
つまり、必要以上に物事を考え続けてしまうことを指します。
- 過去の失敗を何度も反芻する
- 「もしも」の不安で未来を想像しすぎる
- 些細な言葉を反省しすぎる
- 行動よりも思考が先行してしまう
このように、思考が止まらない状態が長引くと、脳が疲弊し、集中力・判断力・気分までも落ちてしまいます。
似ているようで、両者はまったく別ものです。
| 観点 | よく考える | 考えすぎ |
|---|---|---|
| 目的 | 問題解決・意思決定 | 不安・後悔・恐れ |
| 感情 | 冷静・建設的 | 焦燥・停滞 |
| 結果 | 行動に移せる | 行動が止まる |
「考える」は前進を生み、「考えすぎ」は立ち止まらせる。
つまり、“考えすぎ”は思考の過労状態なのです。
心理学では、過度な反芻(はんすう)思考は以下のような症状を引き起こすとされます。
- 不安・うつ・ストレスの増大
- 睡眠の質の低下
- 自己否定や後悔の強化
- 行動力・決断力の喪失
放置すれば、メンタルだけでなく体調・人間関係・仕事のパフォーマンスにも悪影響を与えます。
なぜオーバーシンキングは起きるのか?
人間の脳は、不安や危険を回避するために「未来を予測する」よう設計されています。
つまり、オーバーシンキングは“安全を守るためのシステム”が暴走した状態です。
しかし、現代社会では危険よりも「情報の多さ」や「人間関係の複雑さ」に脳が過剰反応し、“必要以上に考えてしまう”という副作用が起きています。
「失敗したくない」「人に迷惑をかけたくない」
この思考が強い人ほど、頭の中でシミュレーションを繰り返しがちです。
結果、「やる前に疲れる」状態に。
「自分なんてまだまだ」「あの人はうまくやっているのに」
SNSの時代では、他人と比較して落ち込みやすくなります。
これも思考ループを加速させる要因のひとつ。
スマホ通知、SNS、ニュース、広告。
常に情報が押し寄せる環境では、脳が処理しきれずオーバーヒートします。
「何も考えない時間」を持つことが難しくなっているのです。
オーバーシンキングは人によって現れ方が異なります。
「自分はなぜ考えすぎてしまうのか?」を理解するには、自分がどのタイプかを知ることが大切です。
ここでは代表的な4つのタイプを紹介します。
- 特徴:過去の失敗や言動を何度も頭の中で再生してしまう。
- 典型的な思考フレーズ:「あの時、ああ言わなければよかった…」
- 陥りやすい人:完璧主義や内向型の人
- 対処のヒント:書き出して整理する、1日の終わりに振り返り時間を設ける
- 特徴:“もしも…”と未来の出来事を延々想像して不安になる。
- 典型的な思考フレーズ:「もし失敗したらどうしよう…」
- 陥りやすい人:不安傾向が強い人
- 対処のヒント:具体的な対策リストを作る、今できる行動に意識を向ける
- 特徴:会話やSNSでの発言を何度も分析し、反応を気にしすぎる。
- 典型的な思考フレーズ:「あのコメント、変に思われたかな…」
- 陥りやすい人:他人の評価を気にしやすい人
- 対処のヒント:他人の評価は推測でしかないと理解する、信頼できる人に相談する
- 特徴:やる前に完璧なプランを練りすぎて行動が止まる。
- 典型的な思考フレーズ:「まだ準備が足りない…」
- 陥りやすい人:慎重すぎる人や責任感が強い人
- 対処のヒント:小さな行動から始める、完璧より“まずやる”を意識する
ここで簡単なチェックリストを試してみましょう。
5分ほどで、自分の思考傾向を把握できます。
- 同じ出来事を何度も頭の中で再生してしまう
- 会話や行動の後、「あの時こうすればよかった」と考えすぎる
- 明日のことを「もしも…」で延々と想像して不安になる
- SNSやメールの返事を過剰に分析する
- 完璧なプランを作らないと行動できない
- 仕事や勉強で最悪のシナリオを考えすぎて行動が止まる
- 他人の評価や反応が気になり、思考が止まらない
- 考えすぎで睡眠や集中力が低下することがある
- 同じ問題を何度も頭の中で議論してしまう
- 思考が堂々巡りで決断できないことがある
- Yesが0〜3個:あまり傾向なし
- Yesが4〜6個:やや傾向あり
- Yesが7〜10個:強い傾向あり
オーバーシンキングと心身への影響
オーバーシンキングを放置すると、思考だけでなく心や身体にも影響が出ることがあります。
- メンタル面:不安感・抑うつ傾向・ストレス増加
- 身体面:睡眠の質低下・慢性疲労・頭痛や肩こり
- 行動面:意思決定が遅れる・行動に移せない・仕事効率の低下
- 社会生活:人間関係の摩擦・SNS疲れ・自己肯定感低下
研究では、反芻思考(過去反芻型)や心配型思考(未来予測型)は、抑うつや不安症状のリスクを高めると報告されています。
オーバーシンキングを止める7つの方法
ここからは、実践的な解決ステップです。
今日からできる「思考の整理術」を7つ紹介します。
考えすぎを止める第一歩は、「自分が考えすぎている」と気づくこと。
思考に巻き込まれる代わりに、「私は今、不安について考えているな」と言葉でラベリングしてみましょう。
これはマインドフルネス心理学で言う「メタ認知」のトレーニング。
思考と自分を切り離すことで、心がふっと軽くなります。
頭の中で考えていることは、実際よりも複雑に感じます。
ノートに書き出すことで、思考が整理され「重要なこと」「手放せること」が見えるように。
- 紙に書く(スマホより効果的)
- 時間を区切る(3分〜5分)
- 書き終わったら「ここまででOK」と締める
すべての出来事は「自分で変えられること」と「変えられないこと」に分けられます。
後者を手放す勇気こそ、思考の自由を生みます。
著書『STOP OVERTHINKING』でも、「コントロールできないものに思考を費やすのは、時間の浪費だ」と説かれています。
過去=後悔、未来=不安。
思考がどちらかに偏るほど、今が見えなくなります。
そこで役立つのがマインドフルネス。
1分でもOK。呼吸・音・手の感触など、“いま”の感覚に集中してみてください。
脳が静まり、余分な思考が薄れていきます。
考えすぎは「行動のブレーキ」。
逆に言えば、行動こそがオーバーシンキングの解毒剤です。
完璧を求めず、「まずやってみる」。
行動すれば、現実が変わり、思考も自然と整っていきます。
考えすぎはメンタルだけでなく、体の疲労からも起こります。
- 睡眠:寝不足は不安を2倍に増幅させる
- 食事:糖質過多は思考の乱れに直結
- 運動:軽い運動でセロトニン(安心ホルモン)が増加
また、SNS断ちやミニマルな環境づくりも効果的です。
脳の入力を減らす=思考の静寂を増やす。
誰かに話す、カウンセリングを受ける、日記を書く。
「頭の中」から「外の世界」に出すだけで、思考は整理されます。
孤独なまま抱えると、思考は渦を巻くだけ。
アウトプットこそ、思考リセットの最短ルートです。
考えすぎを活かす視点:オーバーシンキングのポジティブ転換
オーバーシンキングは悪いことばかりではありません。
正しく使えば、あなたの強みになります。
- 分析力・洞察力の活用:問題解決や企画立案に役立てる
- 準備力・計画力の向上:リスク管理や戦略立案に活かす
- クリエイティブ思考:複数の視点を考える力を創作活動に転換
- 注意点:思考を無限に続けるのではなく、「適切な時間・対象で使う」ことが重要
オーバーシンキングを放置するとどうなる?
考えすぎを放置すると、脳は常に「警戒モード」のまま。
自律神経が乱れ、慢性的な疲労感やイライラ、不眠を引き起こします。
- 集中力の低下・不眠・慢性疲労
- 自己否定やうつ傾向
- 決断力・行動力の喪失(機会損失)
また、決断が遅くなり、チャンスを逃すことも。
“慎重さ”は美徳ですが、“思考停止”は人生の損失です。
オーバーシンキングを防ぐ「習慣化のコツ」
- 「考えすぎている」と気づいたら、深呼吸3回
- 1日の終わりに「思考リセットノート」を書く
- デジタルデトックスデーを週1で設ける
- 朝の5分で瞑想 or ストレッチ
- “完璧より進行”を合言葉にする
「考えない努力」ではなく、「考えすぎない習慣」を育てることがポイントです。
よくある誤解/Q&A
必ずしも病気ではありません。しかし、長期化し日常生活に支障をきたす場合は、専門家に相談することが推奨されます。
深い思考力は長所ですが、思考が“滞る”“行動に移せない”状況ならオーバーシンキング傾向があります。
完全に無くす必要はありません。「適切に扱う」ことが大切です。考える時間と行動する時間を切り分けると効果的です。
習慣化された思考パターンは改善可能です。小さな行動を積み重ね、セルフチェックや思考の書き出しなどでコントロールできます。
まとめ|考えすぎない人は、行動できる人。
オーバーシンキングは、考えすぎる才能の裏返し。
つまり、あなたの中には「深く考える力」がもともと備わっているのです。
その力を、後悔や不安ではなく、「今をよりよく生きること」に使ってみてください。
考えすぎるより、“感じて動く”。
小さな行動が、思考の渦を静める最初の一歩です。
あなたの頭の中の声は、あなた自身ではありません。
それはただの「思考の音」。
今日から、思考に飲み込まれず、「静かな心で生きる時間」を増やしていきましょう。
参考・関連書籍
著者:Nick Trenton
→ 思考の整理・習慣化の具体的な方法を学べる実践書
HARUIS 
